第5回・青木雄二の世界

 金融業の裏を暴いた漫画「ナニワ金融道」が出世作となった元漫画家でエッセイストの青木雄二(あおき・ゆうじ)さんが5日午前2時12分、肺がんのため亡くなった。58歳だった。(以上、読売新聞より抜粋)

 先程、ネットに接続し、いつもの様にyahooのニュースを読もうとするとトピックスに[「ナニワ金融道」青木さん死去]という見出しが出ていて、最初は意味が理解できませんでした。恐る恐るクリックして、上記の文章を見ても全く実感が湧きませんでした。

 なぜなら、最近でも「週刊モーニング」で人気連載中の「カバチタレ」の監修はもとより、今年になってから何本かの漫画で監修や原作をしていたり、毎月のように様々な出版社から著書が出ていたので、まだまだ現役で活躍していると言うイメージが強く、この訃報は夢にも思いませんでした。

 青木雄二といえば「ナニワ金融道」が有名です。私はワイド版(辞書のようにぶ厚い本/全6巻)で買って読みましたし、監修作品である「カバチタレ」も読みました。他にも、世の中の本質について赤裸々に書かれた著作を何篇も読んで、その思想に感心しました。

 実際、この「ナニワ金融道」を読んで金融業の裏側を知った人は非常に多く、何度かドラマ化(主題歌はウルフルズの「借金大王」)もされたことで一般的にも、金融の実態が広く知られるようになりました。

 「ナニワ金融道」においての青木雄二独特の作画は、後の「カバチタレ」等の作品に強い影響を与えたのは間違いなく、まさにパイオニアといえる作品でした。他にも、独特のネーミングセンス(破目や落振など名前が人物を現している)は継承されているといえるでしょう。

 主人公・灰原の勤める街金である帝国金融金には、様々な職種の人が金を借りに来ます。会社運営資金や選挙資金の為に借金をするのですが、必ず事態が二転三転し、次第に借金が重く圧し掛かり社会的な破滅が待っているのです。その過程を通じて、帝国金融とその餌食になる人々のやり取りで物語は進行していきます。

 個人的なお気に入りは、帝国金融の為に夜逃げした肉欲棒太郎がチケット販売で再起を図る話と南京豆の商品先物で破滅へと突き進む教頭先生のエピソードです。この2つの話は本当にお勧めです。

 世の裏側の仕組みについて、ほんの少しでも興味があれば「ナニワ金融道」を一読する事をお勧めします。創造主である青木雄二が他界しても、心血を注いで作りあげた「ナニワ金融道」や監修を勤めていた「カバチタレ」の連載も続いていきますし、青木雄二の世界はこれからも不滅なのです。最後に青木雄二氏の冥福をお祈りします。


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